大震災と放射能漏れを通じてわかったこと・8

今回、一番大きな注目を浴びているのは、何といっても放射能漏れ事故に関することでしょう

放射能漏れに至までの原因は何なのか? を明らかにする事が、今後の再発防止や既存の原発の安全性を高めるために必要なことですが、この原因究明については、まだ近寄れない状況ですので、当分の間答えは出てこないでしょうし、専門家の方が対応する部分でもありますので、我々一般にはそれほど関係のないことかもしれません

被災地に住んでいた方や一般国民の最大の関心は

どれくらい汚染されているのか?
その汚染により、人体への影響はどうなのか?
再び居住することは可能なのか?

もちろん、帰ることが不可能であればどこに住めば良いのか、とか、仕事の問題とか、被災者の方には大きな問題は山積していますが、一朝一夕に解決できそうにない状況であることは、間違いありません

文部科学省が先日発表した4月末における各地の汚染状況は、次のとおりだそうです



原発から半径3km圏内は立ち入り禁止となっているため測定データはありませんが、この図を見ても明らかなとおり最大300万ベクレル〜3億ベクレルで汚染されている地域が赤で表示をされていて、原発から北西方向へその赤い区域が広がっているのがわかります

これは、放射能の放出時に北西への風が吹いていたためでしょう

肝心なのは、この <300万ベクレル〜3億ベクレル> という汚染濃度です。この濃度がどれくらいの汚染濃度かというのは、素人の僕にはわかりませんが、チェルノブイリでさえ、最高に汚染された土地は380万ベクレルだったそうですから、ひょっとするとチェルノブイリ以上に汚染されているのかもしれません

ちなみに、チェルノブイリの基準は次のとおりでした

148万ベクレル以上は「強制避難」
55万5000〜148万ベクレルは「強制移住
18万5000〜55万5000ベクレルは「希望者は移住を認める」
3万7000〜18万5000ベクレルは「放射能管理が必要なエリア」

だそうです

集計のくくりが違うので、微妙なところはありますが

55万ベクレル以上の汚染地域は「強制移住地域」だそうですから、福島の場合60万ベクレル以上に汚染されている3つのカテゴリーに分類されている地域に当てはまるものと思われますが、図で見ても明らかなとおり半径30kmなどはるかに超えて、飯舘村などは全域がこの区分に該当し、伊達市福島市の一部も同じ状況になっていることがわかります

18万5000ベクレル以上は「希望者は移住を認める」というレベルだそうですので、かりそめにも安全な地域であるとは言えず、福島の場合は、確実にそれ以上汚染されている30万〜60万ベクレルに汚染されている地域は、原発の南側や、特筆すべきこととして、二本松市本宮市郡山市須賀川市の一部にまで広がっていて、須賀川市に至っては原発から80kmほどの距離にある場所です

この図では30万ベクレル以下の場所は、一律に表示をされているので単純にチェルノブイリと比較することはできませんが、「放射能管理が必要なエリア」である3万7000〜18万5000ベクレルの汚染地域は相当広がっているだろうことは、誰でも想像できるものと思われます

発表されているのは、この図のとおり半径80km圏内ですが、実際は80kmを超える場所でも、「放射能管理が必要なエリア」は広がっているはずですし、ひょっとしたら「希望者は移住を認める」地域も80km圏外にまで広がっているだろうことは想像に難くありません



次に考えてみたいのが、このカテゴリーによる汚染にの内容です

「強制退去」については、言うまでもありませんが、この場所にいることは不可能な場所でしょう
強制移住」については、このエリア内に居住するこできませんという場所でしょう
「希望者は移住を認める」については、少なくともこの場所に長く居住する場合は自己責任ですよ・・・ということですから、やはりとても安全とは言えず、先の短い高齢者であればともかくとしても、少なくとも若い方や乳幼児が長く住むのには、相当のリスクが伴うだろうと想像できます
放射能管理が必要なエリア」については、現在では大丈夫かもしれないが、長い年月モニタリング等を行う必要がある場所というような感じでしょうか。リスクを伴う場所だろうと思われますので、未婚者や乳幼児は住まない方が良いのではないかとは思っています

この図は表示されているとおり4月29日に作成されたものです。現在も、原発からは放射能が漏れている状況ですので、気象状況にもよりますが、今後も濃度は高くなっていくでしょうし、汚染地域も広がっていくだろうことは誰しもわかるでしょう。残念ながら、これが福島の現状と言わざるを得ません。これが文部科学省だけではなく米国DOEとの共同発表ですから、信頼性は高いはずです

少し前に、福島の放射の漏れレベルが<レベル4>からチェルノブイリと同じ<レベル7>に上がった時に、アメリカやフランスなどの外国や、原発放射能専門家達から、「チェルノブイリまでは酷くない!」という声が一斉に挙がりました。その根拠は『放射能の放出量の差』の違いを主張されていました

確かに放射能の放出量だけをみると、今回はチェルノブイリよりもだいぶ少ないようですが、土壌汚染とその汚染に伴う人間生活への影響を考えると、福島の方がはるかに影響があるのではないかと思ってしまいます

チェルノブイリの場合、汚染地域は半径300km程にも及んだようですが、福島の場合、まだはっきりとしていませんが、放出量から比べれば、さすがにそこまで及ぶことはなさそうですが、汚染濃度は高そうですし、居住している人間生活への影響は、福島の方が高くなりそうなことは、素人との僕でも容易に想像することができます

両者の違いは様々な要因があるとは思いますが、爆発により一度に大量の放射能を広範囲に撒き散らしたチェルノブイリと、じわじわと放出している福島の違いとか、気象条件などによるものと思われます

ですので、単に放出量だけの比較で福島はチェルノブイリよりも軽いと主張しているような人は、原発推進派とみて間違いはないでしょう。できうる限り原発を継続したい、新規に作りたいと思うような人は、少しでも事故を軽くみせたいはずですから、そのような主張を行うのは当然です

アメリカも、当初は80km以内にいるアメリカ人は避難するように指示をしていましたが、少し前になって、あれは間違いであったとわざわざ訂正までしました。とても額面どおりに受け取れるものではなく、文部科学省の出した先日のデータをみますと、ひょっとしたら、放射線物質の拡散状況をとっくに知っていたのではないかとさえ疑われます

原発は安全です」 ということが崩れ去った今、政府の言うことは 「直ちに健康被害は起こらない」「20ミリシーベルトでも大丈夫」「この程度の放射能ならば安全」といった感じの いわば 「放射能は安心です」 といった安心のアピールです 



旧ソ連政府と日本政府のどちらの判断が正しいのかは、まったくわかりません。大切なことは、はっきりとしたデータで個々それぞれが判断していくことでしょう。そのためには、正確な情報の開示が求められます

昨日は、原発から300kmも離れた神奈川県のお茶から基準値以上の放射能が確認されました。文科省のデータを見ていても、まったく不思議ではないという感想を持ったことは言うまでもありませんが、その反面、こんな遠くにまでも・・・とも思いました。食の安心については、まだまだどうなってしまうやらわからない状況なのでしょうね