大震災と放射能漏れを通じてわかったこと・5

復興や原発への対応は遅々として進んでいないように感じますが、復興財源に係る増税はもの凄いスピードで話し合われているようですね

復興財源で、つなぎ国債を出して来年から3年間増税を行い、そのまま社会保障財源に転じて恒久増税化するというような話もあり、大震災のどさくさに紛れて増税してしまえば目眩ましにでもなるのかと考えているかのようです

また、東電の放射能漏れに伴う賠償については「原発賠償機構」を設立し、そこで検討されようと計画されているようです

東電の財務内容などからしますと、賠償額によっては何兆円も債務超過になる可能性があり、放置すると銀行は資金を貸さず、現状でも発行ができなくなっている社債の発行は不可能になります
そうしますと、会社更生法なり民事再生法なりを適用して、倒産するしかなくなります。東電が倒産したからといっても電力供給が行われなくなるわけではなく、電力会社として使用者に電気を供給する責任はありますので、公的資金を入れずに放っておくと、株式会社として法的な破綻処理をせざるを得ない状況に追い込まれるだけです

では、どのように処理をすれば良いのかというのが、大きく注目されているところです

経団連の米倉会長などは公的資金を投入するべきだ!・・・などと言ってますが、これなどは論外でしょう。公共的な色合いのある企業であれば、何かあれば『公的資金を注入し救済する』などとすぐ言われたりますが、『公的資金とは国が持っているお金』などという単純なものではなく、『我々が支払っている血税』で、その使い道には厳しくチェックすることが必要なのは言うまでもありません
バブルの崩壊以降、大企業の倒産危機はいくつかあり、それぞれ処理方法が違っていたのはご承知のとおりで、りそな銀行足利銀行のような金融機関は公的資金を注入して救済され、証券会社大手の

山一証券は援助を得られず倒産し会社が消滅しました。近年では日本航空が破綻し会社更生法により更生中です

生活に必要不可欠な電力を供給する会社ですから、山一のように潰すという選択肢はもちろんありません。そこで問題になってくるのが救済の方法です

ご承知のとおり、まだ賠償額は確定していません。しかし、数兆円規模にのぼることは想像でき、その額を返済できるかどうかが鍵になってくるように思います

原発賠償機構のスキーム案では、国の資金を貸し出し、それを賠償金に当てて返済させるようなことが考えられているようです(もちろん、まだ決まったわけではありません)。東電の収入は電気の使用量だけですが、この使用量は毎年ほぼ安定的に見込まれる収入で、山一や日本航空のように競争原理が働き営業努力云々によって収入が増減してしまうものではありません

ですので、国の資金を長期に渡って返済させるような計画であれば、東電をそのまま営業させながら存続させることは十分可能で、なんとなく理にかなっている手法のようにも思われます

本来ならば銀行が資金を貸し出して返済してもらえば良いのでしょうが、なぜ国が我々の血税でそのようなことを行わなければならないのでしょうか?

そこで考えなければならないのが資本主義の元における企業の責任のあり方です。企業における経営責任には順番というのがあり、本来ならばその順番に従ってその義務を果たしていかなければなりません。その順番とは次のとおりではないでしょうか?


1 経営者
2 株主
3 社債購入者
4 国
5 個人


1の経営者が筆頭に来るのは当たり前で、2番目はやはり株主でしょう。資本主義においては株主は経営者と等しいようなもので、株主配当を受けたりしているわけですし、たとえ投資目的で保有していたとしても、企業の責任の一端を担っていたことは間違いありません

3番目は社債購入者でしょう。社債を購入するということも、大げさに言えば経営に関与するとも考えられますので、順番としてはここにランクされるのではないかと思われます
そして、その次の4番目が国ではないでしょうか?

現在、さまざまな方法が議論され始めましたが、『国や他の発電会社が賠償金の一部を肩代わりし、東電は分割でそれを支払うようにするということと、少しでも経営安定のために、電力料金の値上げを行う』ような感じで話が行われているようです

これがこのまま実施されるようなことになりますと、株主も社債購入者もいわば保護されている状況になります。これが銀行とかの金融市場に影響力を持つ企業であれば仕方がないとしても、東電は一旦潰してから再生するようにしても、国民にはまったく影響はありません(東電がつぶれたからといっても、発電や送電を止めるわけではありませんから)。現に少し前に破綻した日本航空も、まったく同じで、破綻してから再生するという手続きを進めています

今回の賠償問題については、東電という民間企業の人災により起こした被害ですから、やはり東電がその責任において処理するのは当たり前のことで、国からお金を借りることや、経営安定のための値上げなどはとんでもないことで、それならば何の関係もない一般国民がその費用を負担していることに変わりはありません

その前に、東電に協力したりしていた株主や社債所有者も連帯的な責任を負うのが、本来の資本主義の大原則ではないでしょうか? 株主や社債購入者の中には、他の大企業や金融機関、また、地方公共団体すらいますので、東電が破綻しますと、これらに影響があるのは必至ではありますが、電力の自由化が進められたとはいえ、東電は実質的には国から認められた独占企業であり、いわゆるお役所体質や事なかれ主義、あるいは無責任体質みたいな感じになってしまっているように、今回の対応ではみえます。

本日も、福島第1原発事故の賠償範囲を検討する原子力損害賠償紛争審査会(会長・能見善久学習院大教授)に対して、要望書を提出していたことが明らかになったそうで、その内容は、最大限のリストラや合理化を実施しても賠償費用の支払いが困難となる可能性があるため、国の支援を強く求める内容になっている・・・のだそうです

どうしても会社を潰したくない気持ちはわかりますが、国が支援を行うということは、国民の税金を使うことに他なりませんし、原発のために多額な補助金が出ているのですが、これらもすべて我々の血税で、まだ税金で何とかしてもらおうという気持ちが納得できません

原発事故に伴う損害賠償金を確実に支払えるよう保護だけすれば、今の東電をそのまま残すという意味がありませんので、会社更生法に基づく更正を普通に行ってもらい、経営陣を刷新し東電の企業体質を変えた方が良いように思っています

恐らく、大株主や大社債購入者からは政府に対して、何とか東電を潰さないように・・・・という進言が相当なされているはずです。それは当たり前のことで、株券や債権がパーになってしまうかどうかの瀬戸際ですから、必死になるのは仕方がありません

しかし、少なくとも株主や債権者は、東電が原発というこのような事態を引き起こす可能性のある発電を行っていたのは承知しているはずですし、事故を起こさないとも限らないというリスクを承知して購入しているわけで、株主達は、このような事故を引き起こさないように経営を監視する義務を負っていたともいえるからです

配当だけはキッチリと貰いながら、リスクを受けるのは嫌では、あまりにも甘すぎますし、電力会社だけをそれほど優遇する理由がありません。それでは、資本主義になりませんし、他の電力会社も、何か事故があっても最終的には政府がケツを拭いてくれると思われるのでは、これからの安全管理など望めるはずもありません

損害賠償をキチンと行うという体系を作り、更正して貰うのが良いのではないかと思っており、株主や債権者の方は、被災したと思って非難されている方と一緒に泣いて下さい

世界を震撼させた大事故を起こしながらも公的資金を投入して会社が助かるだけでなく、株主や債権者も助けてしまうというのは、国民が納得しないでしょう


浜岡原発を停止するように要請された中部電力は、本日「検討事項が多すぎる」「株主に説明がつかない」ということで、返事を先送りしました。東電は今まで株主のかの字も口に出していませんが、株主総会も近いことですし、総会がどうなってしまうのか心配しているところでしょう。もちろん株主も、会社更生法により事業を再生させる法的整理になることを一番恐れているはずです

マスコミは東電から1年間で200数十億円の広告費をもらっていますから、なかなか東電が悪いような報道を行うことはできないでしょうし、名だたる大株主もまったく同じで、膨大な広告費をマスコミに支払っています。特に東電の広告費などは反原発を押さえるための経費みたいなもので、マスコミもそんなことは承知していますので、原発のことにはほとんど触れたくなかったようで、反原発の番組などほとんど目にする機会はありませんでした。もちろん、これからもそうだと思っています

ところが、東電がこのような大事故を起こしてしまいましたので、どのように書いてよいやら相当悩んでいる様子がみえています。あからさまに擁護などすれば視聴者からクレームがくるでしょうから、批判するような口調でありながらもわからないように擁護をしている・・・・・ように感じています。もちろん、専門家や評論家にしても同じで、これは、どのような事故や事件が起きてもその構図は同じなので、仕方がないことだとは思いますが、今回の放射能漏れ事故については、あまりにも度が過ぎているような感じがします

企業が不祥事を起こすたびに、たびたび問題となるのが、その企業がニュース番組や報道番組の広告主だった場合です。TV局は否定しますが、やはり手を抜いた甘い報道しかなされませんし、下手をすれば報道すらされない場合もあります。もちろん、これはTVに限らず新聞も同じことで、うがった見方をすれば企業と報道の癒着ですね。つい先日、ホリエモンの有罪が確定し収監されることになりましたが、同じようなことをした企業は執行猶予がつくなど、公正な結果だとは思えないことが多々あります

ライブドア楽天村上ファンドなど、マスコミに広告費を払うことなく一世を風靡しましたが、ご承知のとおりホリエモンライブドアを追われ、村上ファンドインサイダー取引で逮捕され、実質終わってしまいました。楽天だけは日経連へしっかりと加入し、狙われることなく現在の地位を気づくことができたようです。まあ、ホリエモンも村上さんも敵をたくさん作りすぎたのが失敗の原因なのは明らかですね

これとは逆に、東電はマスコミや経済団体は古くからのお友達でしょうし、経産省や政治家とも太いパイプをたくさん持っています。もちろん、大株主も同じですので、なんとか傷を最小限にとどめながら逃げ切りたいのが実情でしょう


これから政治家がどのような発言をするのか? 
マスコミがどのような報道をするのか?
専門家がどのような発言するのか?


キチンと見極めていきませんと、我々の税金を良いように使われて終わりになってしまいます
どうでもよいことならどうでもよいのですが、今回はとてつもない大きな問題ですので、注視してみたいところです