想定外・2

今回の大地震が起きる前、記憶に新しいものでは、昨年のチリ大地震により史上何回目かの大津波警報が発令され、数万人が避難したのですが、結果は最大で1.2m。テレビの各局は三陸から生中継で備えていたのですが、結果は空振りで、「予測が少し過大だった」と気象庁は謝罪会見を行っていました

もちろん、これ以外にも何度も大きな地震があり、津波注意報がされた事と思いますが、記憶にある限り(ここ40年ほど)では、家屋への浸水程度の被害はあったのでしょうが、津波による大きな被害は皆無の状況でした。住民の中には、今回の津波もたいしたことはないだろうとタカを括っていても不思議ではありません

海の中には消波ブロック、沿岸には巨大な防潮堤、また、ここ数十年津波被害がなかったことなどがありますし、当初の津波予測は、一部6mというのがありましたが、ほとんどが3mでした。海岸沿いに住んでいる方ならともかく、ちょっと奥にでも住んでいる住人の方においては、津波がきてもひょっとしたら家屋が浸水するかもしれない程度と思っていてもなんら不思議はありません

なかには、大丈夫だろうと思っていても念のために避難した人も多かったのではないでしょうか。これほどの大きな津波がくるだろうと予想して逃げた方というのは、防災設備の充実やここしばらく津波がなかったことを考え合わせますと、それほどたくさんいたとは思えません

ましてや、沿岸部から奥に入った地域に居住していた人なら、なおのこと思っても仕方がありません。このような状況が被害を拡大してしまった大きな要因の一つであろうかと思っています

『安心しきっていた』のかもしれませんし、『想定外』だと思う人もいるでしょう。しかし、間違いなくこのことが被害を拡大させてしまった大きな原因であろうと思われます。地震と同時に停電になり防災無線で避難の呼びかけができなかったこともあるでしょうが、そのような避難誘導がなくても逃げる人は逃げていますし、大丈夫と思っている人はたとえ避難の放送があったとしても、逃げる人は少なかったのではないかと思われます(それでも、とりあえず避難しておくかと思う人は助かるはずですが、どれくらいいたのかは想像がつきません)

僕の住んでいる甲府盆地では、震度6弱地震に襲われる確立が静岡市に次いで高い地域です。確か東海地震・関東地震などで「ここ数十年の間に発生する確率は80%以上」だったと思います。しかし、甲府盆地では僕が生まれてから経験しているだけでも、今回の震度5弱が最高です。関東大震災時はまだ震度の計測がありませんでしたので正確な震度はわかりませんが、恐らく震度5強か5弱程度だろうと考えています

しかし、地震に関する研究が進み、東海地震や関東地震が起きた際は震度6弱が予想されております。ひょっとしたら震度6強あるいは震度5強になるのかもしれませんが、大変なゆれになることだけは間違いありません

これは、言ってみれば『想定内』の事でありますが、はたしてどれくらいの住民が震度6弱を想定しているのでしょうか? 少なくとも僕はくるかもしれないとは思っていても、いままでそのようなゆれにあったことはありませんし、あるあるとは言われていても、なんとなくまだ大丈夫だろうとか勝手に安全だと根拠もなく地震がこないだろうと信じ切っています(笑)

もちろん、僕の周囲もまったく同じで、東海大地震関東大地震はいつかはくるだろうと思ってはいても、自分の生きている間は大丈夫だろうとか、相当の確立でくるといわれているのに、それに備えている人はほとんど皆無なのが現状です。阪神大震災や今回の東北関東大震災などのような大地震が起きますと、あれヤバイかなぁ・・・・と皆思いだしますが、ほとぼりが冷めてしまうと、勝手にこないだろうと思ってしまいます

もちろん、役所や企業などでは大地震がきた時のためにと、さまざまな想定を行った上でいろいろな訓練を行ってはいますが、電気・水道・下水道などのライフラインが消失することは想定しない上での訓練がほとんどです。まあ、水道水の備蓄タンクから水を汲み上げたり、プールの水から飲料水を作る訓練などもしてはいますが、今回の震災のように燃料がなくなってしまえば何の役にも立たないのが現実ですので、実際の大災害が起きた時には、結局「想定外」という言葉のオンパレードになるような気がしています。まあ、この飲料水のことなどはほんの一部のことで、他にも足りていないだろうということは相当あります。もちろん、これは山梨県内だけでなく他県や他の自治体であっても、それほど大きな違いはないだろうと思います

まあ、人間なんてそのようなものなのでしょう。災害時に一番優先されることは、今回の震災でも何度か言われていますが、『自分自身の身を守る』ことです。「逃げ遅れた人がいないか確認に・・・」「父母の様子を確認に・・・」「貯金通帳と印鑑を取りに・・・」「大事な書類(pc等)を取りに・・・」などのために命を落としてしまった方がいるのが確認されています

その反面「九死に一生得た」というような人もたくさんいます。ちょっとしたことで生死を分けてしまうのが大災害であり、途方もない大津波が襲ってくることを想定していれば、命と引き替えに書類や印鑑を取りに行く人はいないでしょうし、いくらでもやり直せるのに、命を失ってしまえばそれにて人生がお終いになってしまいます

今回の地震、あるいは原発事故をみていますと、『想定する』事の重要さをしみじみと感じてしまい、ちょっとした判断のミスで命を失ってしまうことがあるということを痛感しました
いつくるかわかりませんが、東海大地震関東大地震に対しての備えをしっかりと行おうと思うようになりました