オリンピック雑感・その1

暑い夏を熱狂させているオリンピックもいよいよ閉幕しました。水泳の北島選手は、皆の期待に応えて2つの金メダルと銅メダルを獲得したり、ソフトボール・柔道・レスリングの活躍も素晴らしいものがあり、応援していた甲斐があるという感じです

その反面、2大会連続金メダルの期待がかかった女子マラソン期待の野口選手がレース直前で棄権をしたり、フェンシングではあっと驚く銀メダル獲得など、意外といっては失礼かもしれませんが、戦前の予想や期待裏切るような出来事もあり、話題に事欠かないのもオリンピックの大舞台ならではのものでしょう

今回の競技の中で印象に残っている外国人選手は、何と言っても陸上100m走のボルト選手と水泳8冠のフェルプス選手です。ボルト選手についてはご承知のとおり100mを9.69の世界記録で優勝しただけでなく、最後は少し流しながらの世界記録ですから、誰もが度肝を抜かれた感じではなかったでしょうか。わずか10秒足らずの時間でこれほど人を驚かせる事ができるのは、さすがにこの競技ならではの事だと思います

フェルプス選手に至っては、一人で8個の金メダルという信じられない活躍で、金メダルどころか銅メダルすら取れない国があるというのに、たった一人で8個も金メダルをとってしまうのですから、凄いとしか形容の言葉が見つからないほどの大活躍で、この2人の活躍は長い間人々の記憶に残る出来事ではないかとも思います

昔から比べると日本勢の活躍も素晴らしく、特にここ数回のオリンピックでは女子選手の活躍が目立つようになってきたと思います。東京・メキシコ・ミュンヘンなどの大会では、期待できそうなのがバレーくらいでしたが、最近では競技種目が増えた事もあるでしょうが、陸上・柔道・レスリング・バレー・卓球・バトミントン・ソフトボールなどで世界のトップ達と肩を並べて競技している姿を見ると、日本人の一人として嬉しくなってしまいます

特に柔道やレスリングなどはメダルを量産するほどの活躍ですので、応援していても自然と力が入ってしまいます(笑)。その反面、連続してメダルを獲得している選手が多いのもこれらの競技の特徴ともいえ、レスリングの伊調姉妹のように引退しそうな選手が多いのも気にかかる事です

北島選手も引退しそうですし、引退せずとも次のオリンピックでは年齢的(体力的)にピークの力を発揮するのは難しそうなので、大きな期待を寄せる事はできないでしょう。これから引退してしまうトップアスリート達の穴をどのようにして埋めていくのかが、次大会の結果へ繋がっていくのではないでしょうか

また、4大会連続メダル獲得・2大会連続金メダル獲得で、戦前は注目され期待されていた女子マラソンではありますが、その結果についてはご承知のとおり、野口選手は足痛での棄権、土佐選手は同じく足痛(外反母趾)で途中棄権になってしまい、若い中村選手だけが完走したという結果に終わってしまいました。男子マラソンも大崎選手が棄権という事態になってしまい、選考された6選手のうち半分がレース前に故障をするという異常な事態でした

控えの選手もいたようなのですが、急にマラソンを走る事はできないという事で野口選手の選手変更はできず、土佐選手にしても、外反母趾が痛くて満足に走る事ができない事はとっくにわかっていたと思われ、結局は出場できる3人の枠を無駄にしてしまったようにしか思えず、何とも後味が悪いマラソンでした

出場選手の選考については、前回のアテネ大会では、女子マラソンのQちゃんが選考に漏れてしまい、大きな議論を巻き起こしましたが、野口選手が見事金メダルを獲得し、選考問題についてはその陰に隠れて、なんとなく影が薄くなってしまった感があります

アメリカでは「オリンピックで金メダルを取るよりも国内予選を通過するのが難しい」と言われているくらいで、選考レースに勝たなければ選考される事はなく、バタフライで北島選手の最強のライバルと目されていたハンセン選手すらアメリカ国内の予選で失敗して、200mには出場できなかったくらい予選を重視して選手選考を行っていますが、日本はこのような事はなく、数レースの結果から判断して選考するようになっているのが特徴となっています

ラソンなどは3つくらいのレースが選考レースとされていて、その3レースの結果から総合的に判断して代表を選考していくという感じで、非常に日本的な選考方法ではあります

まあ、見ている側からすれば一長一短があり、どのような選考方法でもかまわないと言えばかまわないのですが、よくよく考えてみると、やっている選手からすれば、あまり良い方法ではないのかもしれません。それが一番如実に現れているのが柔道ではないでしょうか

柔道においては、4月に行われた全日本体重別選手権という試合が、オリンピック出場の選考試合とされていましたが、男子はその大会での優勝者がオリンピック出場選手となりましたが、不可解なのは女子の選出で、7階級ある内の実に5階級の選手が優勝したのに選ばれず、この5階級とも準優勝者が代表選手に選ばれたのです

まあ、柔道連盟からすれば、選考に当たってはこの試合結果だけではなく、過去の経験や国際大会での実績、年齢的な事、オリンピックで活躍できるかどうか、はたまた人気など様々な要素を加味して選考した事とは思いますが、これでは、オリンピック出場を目指して、その大会に全てを掛けて苦しい練習を積み、その努力が実って優勝したのに出場できない・・・となれば、その選手や指導者はどのような気持ちになってしまうのでしょうか・・・

恐らく納得はいかず、悔し涙を流しているのではないでしょうか

今回、この選考試合で負けながらも代表選手に選ばれた人の中には柔ちゃんこと谷選手も含まれています。北島選手と並んで、オリンピックが始まる前からキャンペーンに出ていたアイドルみたいな存在ですし、恐らく、柔道連盟にも強力なスポンサー(トヨタ自動車所属です)がいるでしょうから、彼女を落とす事などはできなかったのでしょう。しかし、これでは、何だかなぁ〜と思わざるを得ません

もちろん、国民の大多数も「ママでも金」という言葉を植え付けられていたので、選考試合で負けたのに選ばれた事には不満どころか、ほとんどが拍手喝采で頑張れ〜・・・と応援しているわけですから、人気とは恐ろしいものだと思いました

反面、アテネ大会のQちゃんなどは、自分の実績からすれば選ばれて当然だという気持ちでいたのに選考されず、ある意味悲劇を味わった人でしょう。あれだけの実績があり、実力もかなりあったし、国民的な人気も高かったのに選考しなかったのは、陸連との関係が良くなかったのではないかとも邪推されてしまいます

いずれにせよ、総合的に判断するような選考方法はちょっと不透明感がある選考法で、日本人らしいといえば日本人らしい方法ではありますが、選考試合で勝ったのに選考されなかったという選手やその関係者にとっては、何とも後味の悪い思いをさせてしまう事も事実でしょう

昔から言われている事に「強いから勝つのではなく勝った人が強い」という言葉がありますが、まさにそのとおりで、選考試合で優勝したのに代表に選ばれないのでは、あまりにも可哀相ですね。彼女らがどのような気持ちでオリンピックの競技を見つめていたのかと思うと、やるせない気持ちになってしまいます

ちなみに、オリンピック女子代表の選考試合の結果とオリンピックの結果は次のとおりです

48kg級 谷 亮子(トヨタ自動車)
 選考試合−山岸絵美選手に決勝で敗退
 ◆銅メダル
52kg級 中村 美里(三井住友海上火災保険)
 選考試合−○優勝○
 ◆銅メダル
57kg級 佐藤 愛子(了徳寺学園)
 選考試合−松本薫選手に決勝で敗退
 ◆7位
63kg級 谷本 歩実(コマツ)
 選考試合−上野順恵選手に準決勝で敗退
 ◆金メダル
70kg級 上野 雅恵(三井住友海上火災保険)
 選考試合−岡明日香選手に準決勝で敗退(岡選手が優勝)
 ◆金メダル
78kg級 中澤 さえ(綜合警備保障)
 選考試合−池田ひとみ選手に準決勝で敗退
 池田ひとみ選手は穴井さやか選手に決勝戦で敗退
 ◆初戦敗退
78kg超級 塚田 真希(綜合警備保障)
 選考試合−○優勝○
 ◆銀メダル

ということで、選考試合に優勝しオリンピックの代表に選ばれたのは、なんと中村選手と塚田選手の二人しかいないのです。この二人については、異論を挟む余地はありませんが、谷本選手と中澤選手に至っては、決勝どころか準決勝で敗退していますし、78級では中澤選手が負けた選手に勝っている選手がいるのに、中澤選手が選ばれているのですから、何とも不可思議な選手選考のような気がします。選考試合でオリンピック代表に勝っている選手は、結局6人もいることになってしまいます

我々一般人は、所詮傍観者ですから、誰が選考されようが何の影響もありませんが、代表選手に勝った6人について(家族や関係者を含めると、もっと多くなりますね)は、複雑な気持ちでオリンピックを見ていた事は容易に想像がつきます

柔道連盟の選考基準については全く知るよしもありませんが、運悪く落選した6人については、今後も腐ることなく練習に励んでもらい、次回のオリンピックで活躍してもらいたいと思わざるを得ません

帰国後、柔ちゃんは次回のロンドンを目指すと表明しましたが、さきほど流れた報道では、「今後、谷選手を特別扱いはしない」と柔道連盟から発表がありました。今頃表明されたら、谷選手に2度も勝っている山岸絵美選手は浮かばれませんね