神様・仏様・上野様

それにしても、女子ソフトボールは凄かったですねぇ。過去の戦績やオリンピックにおける戦いの様子を思い浮かべてみると、勝って欲しいとは思っていても、勝てる確立はかなり低く7〜8割くらいは負けるだろうと冷静に予想していました

押さえはしたものの初回から満塁のピンチを迎えたのに対し、日本の攻撃陣は前日の準決勝と同じように大振りばかりを繰り返し、三振の山を積み上げていましたから、僕ばかりではなく誰しも「今日はヤバイぞ」と思った事でしょう。僕は、2回が終わった時点では、2対0か3対0くらいで負けそうだと思っていました

しかし、その後は少ないチャンスを確実にものにするばかりではなく、ピンチを迎えても鉄腕上野がしっかりと丁寧に押さえきり、最終的には3対1と快勝しました

アメリカの選手は身長が180cmを越すような大きな選手はいるし、ここまで五輪は負け無しで連覇を続けているまさに王者です。対する日本は、小柄な選手ばかりで体力的には、はるかに劣っていますし、今回のオリンピックでも打率・HR・防御率の上位者はすべてアメリカの選手が占めていて、冷静に分析すればするほど日本の勝ち目は少なく、勝つためには数少ないチャンスを確実にものにする事と、ピッチャーが最少失点で押さえる事が必要なのですが、そう易々とできるはずはなく、今大会でも予選などで2回対戦していますが、7対0と4対1で2敗していますから、簡単に勝てる相手とはとうてい思えません。アメリカチームにしても恐らく自分達が負けるとは想像もしていなかったでしょう

今回の日本チームについては、今までのオリンピックの代表チームとしての総合力はそれほど高くないと評価されてきていたので、メダルには手が届くものの金メダルまでの期待度はそれほど高くありませんでした

しかし、結果は金で、先日の準決勝を含む2試合を苦しみながらも連勝し、その勢いというか波に乗って、決勝では王者に快勝することができました。これは、チームの総合力もさることながら、誰が何と言っても上野投手の頑張りにつきると思っています。野球もソフトボールも勝敗の70〜80%は投手力で決まる競技で、団体戦でありながらも投手個人の力量に大きく左右されます

準決勝の行われていた日の試合も手に汗握る試合で、TVに釘付けされて見ていましたが、負ければ終わり(金メダルが獲れない)という試合でも冷静に黙々と投げ、投球数が300球を越えようが頑張っている上野投手を見て、凄いなぁと感動しながら見ていたのですが、その反面、こんなに投げては明日の決勝戦はダメだろうとも思っていました

勝戦のオーダーを見てみますと今日も投げるということで、前日の反動もあるだろうから、2〜3点くらはすぐに取られてしまうものとも思っていました。しかし、丁寧にコーナーを突く投球を繰り返し、失点1という最少失点に抑えたのですから、まさに上野様様です

結局、前日の2試合で318球、決勝では95球と2日間で400球以上も投げるという鉄人的な頑張りでした。翌日のTVを見ていましたら、前日の投球で筋肉はパンパン状態になっていただけでなく、投手として大事な右手中指の先端部分の肉も剥がれて、普通なら投げられる状態ではなさそうだったのに、「痛かったですが痛みを我慢して投げていました」と、本人はサラッとした表情で語っていました。凄すぎです!!!

その昔西鉄ライオンズ稲尾和久さんという投手がいて、鉄腕と表されるくらいの大投手でした。特に我が巨人と闘った日本シリーズでは、7連投し3敗したものの残り4戦を4連勝して、西鉄を日本一に導いた事がありますが、今回の上野投手を見ていると、稲尾さんとダブってきて、今回の彼女の大活躍は後世まで語り継がれるものになるだろうとも思っています

今回のオリンピックでは短距離のボルト選手に度肝を抜かされましたが、彼女にも度肝を抜かされました。筋書きのない競技はなんと面白いのでしょうか。くだらないお笑い番組やクイズ番組からは、何も得られる事はありませんが、さすがはスポーツの祭典と呼ばれているオリンピックで、数々の名勝負や感動を見せてくれます

今回の競技の中では、陸上短距離とソフトボールが一番面白かったです