箱根駅伝

箱根駅伝が正月の風物詩となって、もうかなり経つようになりました。僕も、競技ファンではなかったのですが、地元の大学(山梨学院大学)が出場するようになってからというもの、何となく見るようになりました。山梨学院大学は20年ほど前から、この競技に力を入れていて、3度の総合優勝を飾ったこともあり、箱根駅伝で有名になった大学です

地元の大学と言うことで応援するようになってからは、箱根駅伝を見るようになり、今では、チビチビお酒を飲みながらこの放送を見るのが、正月のスタイルになってしまいました(笑)

今年の大会は、2区でモグス選手の快走があって一旦は首位に立ち、その後は、他の選手の踏ん張りはあったものの、総合6位という成績でした。まあ、今の力量からすれば、こんなものでしょう

今年の大会は、途中棄権する選手が3人もでた異常な大会と言うことで、大会後も注目されました。「選手の体調管理をしっかりとしていなかったのではないか?」「選手に過度なプレッシャーがかかっていたのではないか?」「大学やOB達が選手にプレッシャーを与えすぎたのではないか?」等々です

駅伝とはいえ、普通の陸上競技ですから、選手や関係者は体調管理もそこそこしているはずですから、やはり目に見えないプレッシャーというのが、選手の体調を崩させてしまったのかもしれません。それだけ、この大会が重いものとなったきた事の証しとも言えるでしょう。今の過熱ぶりは、地元の大学や出身大学、あるいは好きな大学を応援するというシンプルな競技ではなく、大袈裟に言えばオリンピックや世界大会に匹敵するほどのメジャーな競技になってしまったのも、知らず知らずのうちに選手や関係者にプレッシャーを与えるようになってしまったのではないかと思われます


それにしても不思議なのは、なぜ箱根駅伝だけがこのように注目されるようになったのでしょうか?


箱根駅伝とは、正式名称は東京箱根間往復大学駅伝競走ということで、主催は関東学生陸上競技連盟ということになり、簡単に言うと「大学駅伝の関東大会」でしかありません。大学駅伝という競技だけ見ますと、全日本大学駅伝対校選手権大会というのがあり、こちらは日本学生陸上競技連合というのが主催になっていて、こちらの大会は文字通り大学日本一を決める大会です

普通であれば日本一を決める全日本の大会の方が面白いと感じると思うのですが、こちらの方の注目度は低く、関東大会である箱根駅伝の方が数十倍も注目されているのが不思議と言えば不思議で、ある意味では関東大会の方がメジャーになりすぎたのがこの原因でしょう。日本一を決める大会よりも、関東一を決める大会の方がメジャーな大会などという競技は、日本中探しても箱根駅伝だけではないでしょうか(笑)

それと、毎年注目されるのは、シード校に残れるか否か・・・も、大きく注目されています。ご承知のとおり総合10位までに入りますと、次大会の予選を免除されて出場資格を得るという制度です。チームを構成する選手が毎年替わってしまうのに、チーム自体がシードされるのですから、冷静に考えるとこのシード制度というのも不思議な制度です。このような制度も他の競技では、ほとんど聞いたことはありません。他の競技では、新チームで新年度から行われる各種大会を通じて成績上位チームをシードするということはあり得ても、前年度の成績でシードが決まってしまうと言うのも、ちょっと不可解な制度のような気がします。これが他の競技、例えば野球などで同じ事が行われるようになりますと、全国的に熱狂する高校野球では、前年度の上位チームに進学希望者が殺到してしまうでしょう(笑)。この制度も、選手や関係者に過度なプレッシャーを与えている原因の一つとも思えます

駅伝の面白さは、一人の力が突出していても勝つことはできなく、選手全員の力が総合的に強くないと勝つことができない、ある意味珍しい陸上競技でもあります。他の陸上競技は、ほとんどが個人競技で、個人の力量のみで成績が決まってくるのに対し、陸上の団体競技はリレーと駅伝しかないというのも、この競技の特殊さを物語っている事と思います。スーパースターがいてもチーム力が弱いと勝てませんし、飛び抜けた選手がいなくても総合的なチーム力が高いと勝てますので、これが駅伝の面白さでもあるでしょう

また、それとは逆に駅伝の難しさや残酷さはそこにもあります。たった一人が調子を崩したりするだけで、優勝争いから脱落してしまったり、シード権を失ってしまいます。野球・サッカー・ラグビー・バレーなどの他の団体競技であれば、一人の選手が調子が悪かったり、試合中に怪我をしたりしたら交替させれば済んでしまいますが、駅伝だけは途中交代することはできませんし、その選手が任された区間をどうしても走りぬけなければなりません。これが駅伝の面白さの一つとも言えますが、残酷な一面であることも否めない事実でしょう。今回の大会で、3人も途中棄権者が出てしまったので、その残酷さという負の面が表面化したように思います

今では、陸上の長距離を練習している選手は、小さい時から箱根駅伝に出場することを目標に練習していますし、箱根に出場したい人は、間違いなく関東の大学に進学するようになっています。陸上競技のレベルアップを考えると、良い面もあるとは思うのですが、何となく箱根駅伝で走ると言うことだけが最終目標になってしまい、大学時代に燃え尽きてしまい、社会人になってこれからという時には、まったく力が発揮できていないようにも見えてしまいます。ここのところ、世界で闘える長距離ランナーが出てこないのも、それに原因の一つがあるのではないかとも思ってしまいます

それと、ここのところのプロスポーツでも競技を楽しんで行っている人が増えているように思うのですが、箱根ランナーも所詮は大学生ですから、もっと楽しみながら競技をしても良いのではとも考えてしまいます。とはいえ、箱根駅伝が、ここまでメジャーになってしまうと、それもできないのでしょうね

伝統を重んじることは大事な事ではありますが、それにより弊害が増していくような事があるのなら、思い切って見直す事も必要かもしれません