多選禁止

先日、神奈川県で県知事多選禁止条例が可決されました。多選批判というのは、昔からたくさんあって、特に政治腐敗の温床になっているとの指摘です。長い間権力の座に座っていますと、知らない間に特定の業者と結びついたりしてしまうのは世の常みたいなもので、これは世界中どこでも同じで、江戸時代の幕府政治もまったく同じ感じでしたから、いつでもどこでも共通の認識だったのでしょう

ここ1〜2年だけでも数人の知事さんが逮捕された事もあり、ちょっとクローズアップされたりしたのですが、たいしたことはなさそうな問題なので、それほど騒がれる事はありませんでした

しかし、神奈川県の松沢知事さんは、これを進めていたようで、つい先日県議会で多選禁止条例が可決されたというニュースが配信されました。多選とは4選のことで、知事職は最長で3期12年までとするということを、県条例で決めたものです
近年は、それほど多選の話は少なくなりましたが、小さな町村では、5期〜8期の長期にわたり町長や村長職を務める人がいたり、知事や市長でも、長い人は5〜6期くらいの人もいました

多選については、長期にわたって権力を保持したからといって、絶対に腐敗するというものではなく、なかには清廉な権力者もいて、一概に多選を禁止するのは良くない・・・・・というのが一般の風潮でしょう

このことは、いわゆる二世議員(あるいは三世議員)にもあてはまる問題ではないかと考えています。二世議員だからと言って、全ての議員が政治家としての能力や資質が無いというわけではなく、二世であろうとも素晴らしい議員はいるため、二世議員の禁止には至っていません

多選の話になりますと、当の当事者やその周囲の人は、「これは民意だ」と考えている人が多く、民意で選ばれた人がその権力に座るのだから問題は無いと言います。また、民意に背く人は淘汰されるだろうということもあったり、ひょっとしたら、憲法違反の可能性もあると言う事を論拠に多選禁止に反対しています。確かに、この言い分にも一理あって、選挙で選ぶという事は民主政治の根幹でもありますから、民意の象徴であるといえば、まったくそのとおりなのですが、そのことが政治腐敗に繋がる恐れもあることは確かで、この問題を難しいものにしています

ご承知のとおり、アメリカの大統領は最高で二選までとされています。強大な権力を握っているわけですから、憲法の改正を行い最大二選までとされたようです。州知事なんかでも、州によって対応は違いますが、半数以上の州で多選は制限されています
まあ、アメリカが多選禁止だからと言って、多選禁止を言うつもりはありませんが、僕は多選禁止には基本的に賛成の立場です

議員さんなら何期努めてもらってもかまわないと思うのですが、やはり首長や総理大臣については、多選禁止をあてはめる方がよろしいかと思います。政治の世界というのは、魑魅魍魎が住むとか、複雑怪奇だと言われているように、表の政治とともに裏の業界等との癒着がある事は良く知られているところであります。特定の業者と癒着するということも、あまり良くない事なのですが、首長というのは、特権を持っている職業ともいえるものですから、やはり多選のしばりや定年制というものがあっても良いのではないかという単純な発想からです

最近はあまり聞かれなくなりましたが、「老害」という言葉があります。歳をとっていきますと、それに従って、経験は増えていきますが、体力・気力・知力等の能力は、どうしても落ちていってしまいます。これには個人が差があり、全ての人が同じように衰えていく事はありませんが、衰えていく事だけは確実です。経験則で片づける事ができる課題や問題だけであれば、ご老人の方に政治に携わっていても問題はおきませんが、先見性や想像力、あるいは発想力を問われるような課題になりますと、やはり、若い人の方が優れている点は多いと思われるのですが、首長や国会議員の平均年齢をみてみますと、とんでもないことになっています(笑)

普通の一般的な会社であれば、定年というのがあり、能力があろうと無かろうと定年の年齢になってしまいますと、どんなに優秀な方であれ、自動的に会社をやめねばなりません。政治家も同じ事があっても良いのではないでしょうか?

それと、さまざまなところでいわゆる構造改革が進んでいますが、構造改革をされていないのは政治の世界だけで、ちょっと特権階級的な世界になってしまっているというのも、市民や国民の代表としてはあまり好ましくないのではとも思っています

既存の政治家(首長や各種議員)でも、素晴らしい人もいれば、それほどたいした事のない人まで玉石混交です。政治の世界でも世代交代が早く進むようになれば、活力がでてきてダイナミックに政治の力が発揮できるのではなかと思っています

そのためには、定年制と多選禁止は、法律でキチンと決めておき例外を許さないのが一番良い方法で、交代が早く進む事により、立候補できる機会も増え、埋もれていた人材の発掘もできるでしょうし、面白いのではないでしょうか

政治のダイナミズムを考えますと、あと必要なのは、二世議員の禁止でしょうか。たとえ二世議員であっても、良い人もいればダメな人もいるのはご承知のとおりですので、すべての二世議員を禁止するという事でなく、二世で立候補するためには、最低、選挙区を替えるとかの措置を行えば、いわゆる地盤や看板だけで当選する人も減って、本当に候補者の善し悪しで議員を選ぶ事ができると思います

現在の選挙では、【地盤・看板・鞄】と言われているように、親や関係者の地盤(基礎票という感じでしょうか)、看板(地元の名士とかの知名度)、それと鞄(資金力)で当選が決まるとされています。これは地方へ行けば行くほど、このような傾向にある事は、間違いありません。そして、負けるとわかっている戦はなかなかしませんので、新たな候補者もなかなか育たず、どうしても長期間首長や議員を続けるという事になっています

これでは、あらたな政治家などなかなか育ちませんし、【機会の均等】ということにも結びつかない感じがします。二世を禁止するのではなく、二世として出たいのなら、多の選挙区から出馬するようにすれば、人や政策本意の選挙ができるのではないでしょうか