鹿哀れ・・・

掲示板に投稿した鹿の写真についてですが、これは滅多に目にすることができない光景だと思いますので、ちょっと紹介することにします
この日は、川の近くで観察をしていたのですが、対岸から落石の音が聞こえたので、仲間が見にいってみると今まさに鹿が落ちていく瞬間で、『ドボン』という音とともに鹿が川に落下したそうです

川に落ちた鹿は、しばらく泳ごうと頑張ったようですが、思ったように身体が動かないのか、すぐに岸辺に上陸して、岩の横に横たわるように休み始めました。右前足と左後ろ足を骨折している事はわかったのですが、望遠鏡で観察してみると、左目の周辺が異様に膨らんでいたり、鼻から出血をしていたり、右の袋角が割れていたり、背中や腹部に怪我をしているのがわかりました。ただ傷自体はそれほど深くないのか、肉が見えているのにもかかわらず出血量はそれほど多くありませんでした

不思議な事に、数分くらい経過したら傷口を中心にいわゆる「金バエ」が数匹集まってきては、傷口周辺にたかりはじめました。もちろん、ハエにたかられた鹿もそれが気になるのか、尻尾を振ったり、体を震わせてハエを追い払ったりしているのですが、いかんせん身体のダメージが大きいため、次第に身体を震わせる感覚も長くなってきました

鹿もこちらに気がついていて、ずーっとこちらを凝視しているのですが、まったく動く気配は見せません。しばらく放置しておいて30分ほどして再び鹿の様子を見てみると、1m程移動していました。恐らく這って移動したようですが、どこにも行き場がない事がわかったのか、しきりに周囲を見渡してはいるのですが、動こうという気配は感じられませんでした。1枚目の写真からでも多少移動しているのがわかると思います

その後もしばらく放置しておき、夕方帰りがけに覗いてみると、すでに体力の限界を感じ始めたのか、周囲を見渡す事もなくただグッタリとしているだけでした。最後の力を振り絞って多少移動はしたものの、このような状況では数日を待たずに死んでしまう事でしょう


この写真が転落事故の起きた現場です。右側の斜面から転落して川に落ちました。一旦は泳ごうと試みたようですが、それもかなわず仕方がなく写真の位置に上陸しました。陸側は急傾斜な断崖になっていますので、ここを登る事は不可能です。また、正面は川ではありますが、急流で水量も豊富なため、怪我をして体力のない身体では激流に流されてしまうだけで、かろうじて上陸した場所に居る事ができるといった状況でしょう

一番の問題は鹿の運命です。死んでしまう事は確実なのですが、その後にクマの旺盛な食欲を満たしてしまうのか、イヌワシのヒナの旺盛な食欲を満たしてしまうのか、はたまた、キツネやタヌキなどがその上前をはねてしまうのか・・・・・

「鹿が上陸した上方には繁殖中のイヌワシの巣がある」「鹿に近寄るのには激流を渡るか、急峻な崖を通ってこなければならない」などという条件を考えると、イヌワシの餌になってしまう確立が非常に高そうで、時間さえあれば数日観察してみたいですね


この写真は、当日親が運び込んできた子鹿で、一生に行った優秀な仲間が撮影したものです。この周辺のイヌワシは、ノウサギが少ないのかノウサギを狩る場所が少ないのか、ノウサギよりも他のほ乳類(シカ・カモシカ・テン等)に依存しているため、このような大きな鹿があると、絶対に食べるはずです。おまけにトビやカラスもいませんから、間違いなくイヌワシとクマのどちらかに食べられるでしょう

このような状況に遭遇する事など、一生に一度もあるはずがなく、三生分も四生分も生きてもまず出会えない場面だろうと思います(人為的に行えば別でしょうが・笑)

鹿も哀れではありますが、こんな大きなチャンスが来ても、仕事に行かなければならないサラリーマンもけっこう哀れなものです。すでに退職してフリーに動き回れるのなら問題はないのですが、本当にもったいないですね

次の週末まで我慢すれば・・・とも思うのですが、週末は土日とも仕事が入っていて休む事はできません(泣)

平日になんとか時間を見つけて見に行くしかありません。幸いな事に、この鹿も多少は奥に移動したため、川の増水による流下は避けられそうですし、次回行くチャンスがあれば、イヌワシかクマに食べられている姿を見る事ができることと思います

しかし、残念なのは記憶媒体となるカメラもビデオを持っていないということで、誰かに借りて行かなければなりませんね(笑)